2021年を漢字1字で総括しますと、「通」でした。
通うこと、通じること、通じないこと、通い合うこと。
「通う」という点については、福岡・九州北部の様々な場所に、さほど具体的理由もなく直感的に足を運びました。
行く先々で
「多くの人にとってほぼ例外なく いまのところ映画というのは体外に存在するが、それが体内に存在するようにする」
「映画を上映せずに 映画を上映したのと同様の心理・精神的効果をもたらす」
など、よくわからないことばかり言っていましたが、たくさんの方が取り合ってくださいました。
2011年秋に旅行会社を退職して、翌年に映画をやり始める前までの数カ月間、「自分は映画をこれからやる」ということをアジア・ヨーロッパの行く先々で言い続けるという旅をしたことがありました。この1年はその旅の感覚に似ていました。
今年出た中でも最も面白かった小説の一冊に平野啓一郎の『本心』という作品があり、同氏は分人主義(一人の人間の中には、いくつもの人格があり その複数の人格の集合体が一人の人間であるということ)というスタンスを提唱していますが、今年は、映画の未来に楽観的な自分と悲観的な自分の板挟み(分人)の中にいました。家族との日常や幼稚園の送り迎えのひとときが、ふとしたら巻き込まれてしまう当惑の渦から遠ざけてくれていたと思います。
なお、2018年から制作してきたイラン・シンガポールとの合作長編 "On the Zero Line" は、来年ようやく動きが生じてくる見込みです。動きの大小はわかりませんが、とりあえず動きがあるということは確実に現時点でお伝えできます。
よい流れとなるように、日々精進していますが、作品を待ってくださっている皆さんにすこしでも早くお届けできるように最善を尽くしている最中ですので、来年もどうぞよろしくお願いします。